「スカイブルーのマフラー – 過去編」

1. 出会い
二年前の冬、信哉と真奈美は偶然のような必然で出会った。大学の友人たちと参加したスキー旅行で、真奈美は信哉の目に留まった。彼女は柔らかい笑顔を浮かべ、冷えた手をポケットに入れていた。そんな彼女に、信哉は自分のマフラーをそっと差し出した。

「これ、使って。寒いでしょ?」
「え?でも、信哉くんは?」
「俺は平気。どうせ厚着してるし。」

少し戸惑いながらも、真奈美はマフラーを受け取り、その場で巻いた。スカイブルーのその色が、白い雪景色の中でよく映えていた。

それが、二人の始まりだった。

2. 恋の時間
スキー旅行をきっかけに、二人は頻繁に連絡を取り合うようになり、やがて付き合うことになった。信哉は、真奈美のために新しいスカイブルーのマフラーをプレゼントした。それは、出会いの記念として彼女に贈ったものだった。

「これ、君に似合うと思って。」
「ありがとう。すごく綺麗な色だね。」

真奈美の嬉しそうな顔を見るたびに、信哉の心は温かくなった。二人で過ごす時間は、信哉にとってかけがえのないものだった。

3. すれ違い
しかし、そんな幸せな日々にも次第に陰りが見え始めた。真奈美が時折遠くを見るような目をするたびに、信哉は心の中で不安を募らせていた。

「今日って、前の彼氏の誕生日なんだよね。」
何気なく漏らされた真奈美の一言が、信哉の胸に冷たい棘を刺した。
「まだ忘れられないの?」
「そんなことない。ただ、思い出しただけ。」

その言葉が二人の間に見えない壁を作り始めた。それからは、些細なことで衝突し、二人の距離は徐々に開いていった。

4. 別れの日々
ある日、信哉は意を決して告げた。
「……少し、距離を置こう。」
真奈美は驚いた顔をしたが、静かに頷いた。
「そうだね……きっとそれがいいのかも。」

別れ際、真奈美は「もう平気だから」と微笑んだ。その笑顔は強がりであることを、信哉は痛いほど理解していた。それでも、何もできない自分が情けなかった。

その日から、二人は別々の道を歩き始めた。

5. 再会の予感
月日は流れ、二人が別れてから二度目の冬が訪れた。街中がクリスマスムードに包まれる中、信哉はふと足が向くままに歩いていた。そして気づけば、かつて二人で訪れた思い出の場所へと辿り着いていた。

あのカフェ、あの並木道、そしてあの時計台。どの場所にも、真奈美の笑顔が重なって見えた。雪がちらつき始めた夕暮れ時、信哉はふと立ち止まり、深い息をついた。

6. 偶然の再会
「信哉?」

聞き慣れた声に振り返ると、そこには真奈美が立っていた。少し驚いた顔をしていたが、すぐに小さな微笑みを浮かべた。その首には、信哉が贈ったスカイブルーのマフラーが巻かれている。

「……久しぶりだね。」
「そうだね。」

短い会話の後、二人はしばらく黙ったままだった。言いたいことは山ほどあるはずなのに、何から話せばいいのか分からない。信哉が絞り出すように口を開いた。
「そのマフラー、まだ持っていてくれたんだね。」
「うん。寒い冬にはこれが一番暖かいから。」

真奈美の言葉に、信哉の胸にわだかまっていたものが少しだけ溶けていくようだった。過ぎ去った日々はもう取り戻せない。それでも、彼女がそのマフラーを巻いていることが、かすかな希望を灯してくれる気がした。

7. 新たな一歩
「もし良かったら……少し歩かない?」
真奈美は少し考えた後、小さく頷いた。二人は雪の降り積もる道を歩き出した。過去の痛みを抱えながらも、未来に続く新たな足跡を刻むように。

信哉の心の中には、もう一度彼女を愛せるかもしれないという予感が芽生えていた。それが確信に変わるかどうかはまだ分からない。ただ、一瞬の熱い感情が、冬の冷たさを和らげてくれた。

こうして、1部の物語へと繋がっていく――。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください